Tokyo Techiesが伴走します
MeeTruck株式会社(以下、MeeTruck)は、2020年4月、ソフトバンク株式会社 とNIPPON EXPRESSホールディングス傘下の日本通運株式会社が共同で設立した会社です。 MeeTruckは、物流業界の抱える課題をテクノロジーの力で解決し、物流業界のデジタルトランスフォーメーションを支援しています。Tokyo Techiesは、MeeTruckの設立当初からシステムコンサルティングやアプリケーション開発、セキュリティ監査などでMeeTruckのSaaS構築に貢献しました。そこで今回は、MeeTruckのCTOである小野寺さんをお招きし、開発にあたっての課題やMeeTruckのサービスの特徴、またTokyo Techiesの果たした役割について、インタビュー形式でお話しいただきました。
質問: 物流業界は、どのような課題を抱えていますか?
回答:私たちは事業立ち上げの段階から、物流業界の課題を知るために、何度も現場に出向き、膨大なユーザーリサーチを重ねました。物流業界は、人口減少やライフスタイルの変化に伴い、様々な問題を抱えています。 例えば、トラックドライバーや配車担当者など、物流の重要な担い手が高齢化していることや、深夜・長時間労働などが必要な労働環境とそれに伴う慢性的な人手不足。それから、スマホやネットショッピングの普及によるEC市場の拡大で、個人宅への小口配送が増加しています。これらのことが業界全体の人手不足問題に拍車をかけています。さらに、デジタル化の遅れがトラック積載率の低下も引き起こしています。その他にも、コンプライアンスの厳格化、CO2削減など環境負荷低減への要求など、大小様々な問題が山積している状態です。
質問: MeeTruckはどういう取り組みを行っていますか?
回答:MeeTruckでは現在、運送会社の業務支援を行うクラウド型Webアプリケーションおよびモバイルアプリケーションを提供しています。これは、日々の配車業務を中心として、案件の登録、ドライバーへの作業指示、荷主への車番連絡、実績の登録と照会、請求業務や従業員の勤務管理に至るまで、運送会社の実務をサポートするためのさまざま機能を搭載しています。
このサービスによって期待される効果は、例えば、配車業務は長年の知識と経験が必要で、それゆえに属人化しやすく、後継者も育ちにくいという課題が現場にはありますが、MeeTruck導入によって業務が可視化・一元化されることになり、事業所内で共有することができるようになります。
また、可視化され、データで管理されることで、事務員は日々のわずらわしい帳票の転記作業から解放されますし、経営者は日々の売上や社内リソースを把握しやすくなり、経営計画が立てやすくなります。 さらに、ドライバーアプリの活用によって、ドライバーの勤務状況が把握しやすくなり、コミュニケーションも円滑になります。配車担当は、事故や渋滞などのイレギュラーにも対応しやすくなりますから、配送効率の最適化にもつながり、結果として労働時間の短縮をもたらし、従業員満足度の向上も期待できます。
この他にも、2022年の始めには、トラックマッチングサービスを新たにローンチいたしました。これは、荷物を運んでほしい側と運びたい側をつなぎ、それぞれの条件に合う荷物やトラックを簡単に見つけることができるサービスです。ドライバーやトラックの空きリソースを有効活用することで、業務の効率化や売上の向上に貢献します。
質問: 日本は世界で最も発展している国の一つで技術的にも優秀ですが、その日本のいくつかの業界ではデジタルトランスフォーメーションが成功していないという現状があります。その状態について、何が主な原因だと小野寺さんはお考えになっていますか?どこにボトルネックがあるとお考えになりますか?
回答:デジタルトランスフォーメーションという言葉が目指すべき世界観は、デジタル技術の活用によって、ビジネスモデルや業務プロセスそのものが刷新されて、人々の生活がより豊かになっていくようなことだと思っています。実際のところ、DXが急務だと捉えながらも、単に既存業務のシステム化・デジタル化を目標にしてしまっているケースがあると思います。デジタル技術なくして、DXの推進は有り得ないと思いますが、デジタル化はDXのひとつの手段に過ぎないはずです。DXの必要性は認識されるものの、デジタル技術の活用によって自分たちは何を達成したいのか、その具体的な検討に欠けたままデジタル化を推し進めてしまうケースがあるように思います。
それから、日本特有の課題として、新しいIT技術の導入によって、業務プロセスを変革したり、新たな価値を創造しようとするような「攻めのIT投資」が弱いと言われます。 今、日本企業の8割は老朽化したレガシーシステムを抱えているそうですが、業務効率化やコスト削減を実現するために、それらのシステムに対して「守りのIT投資」を行う傾向があり、なかなか枠を飛び越えた戦略にまで踏み切ることができず、このようなことがDXの足かせになっているのかもしれません。
質問: MeeTruckは、日本の物流業界のDXにあたって、今後どういう貢献をされていきますか?
回答:MeeTruckは物流業界のデジタルトランスフォーメーションを支援する立場とはいえ、デジタル化が常に正解であるとは考えていません。私たちは、デジタルとアナログのバランスを見極めることが大切であると考えています。特にこの業界には、アナログの良さを感じていらっしゃるお客様が多くいらっしゃいます。そのため、実際にお客様の元に足を運び、生の意見をお聞きするなどして、徹底したお客様ファーストを貫き、単なるデジタル化を推し進めるのではなくて、テクノロジーの力でお客様の課題に寄り添うという姿勢を続けています。
また、ターゲティングの設定として、国内トラック輸送の大半を占める企業間物流の担い手である中小の運送会社を設定しています。運送会社に限らず、こういった社内リソースの少ない中小企業にこそ、デジタル技術活用による業務効率化が必要だと感じています。日本でDXの取り組みがニュースになるのは大企業が多いですが、日本の9割を占める中小企業が果敢にDXにチャレンジできるようなことになれば、日本全体のDXが活発化していくように思います。そんな想いもあって、現在は中小運送会社における現場の課題に寄り添い続けています。
質問: 今回の開発ではアジャイル開発のスクラムを採用しましたが、色々な開発の手法がある中でなぜスクラムを選んだのでしょうか。
回答:ウォーターフォールだと仕様や設計など前工程が仕上がっていなければ、後工程で困るところがあると思います。私たちが進めるプロダクト開発においては、作るものが予め決まっていません。 お客様の生の声や、行動傾向から仮説を立て、リリース計画を立て、最低限の仕様やデザインを整えた上で、スプリントと呼ばれる一定の期間で素早く開発をおこない、果敢にリリースして、ユーザーフィードバックを得ることで仮説の検証をおこない、また新たな仮説を立てます。 そのようにして、仮説と検証のイテレーションを高速で回すことで、プロダクトやサービスをより良いものへと改善していくために、仮説検証型のアジャイル開発を実践しています。
質問:弊社Tokyo Techiesについて知った経緯を教えてください。
回答:Tokyo Techiesと一緒にお仕事させていただきたいと思った理由は、スペシャリストとして高い開発スキルとご経験を持った人材が多く在籍しており、MeeTruckがこれから取り組むチャレンジの良きパートナーになると感じたからです。当時開発パートナーの選定に関わっていた弊社の横井(MeeTruck株式会社 代表取締役社長兼CEO)が言うには、Ducさん(Tokyo Techies創業者)は別プロジェクトでも実績があり、彼自身の技術力の高さや発言の的確さは印象に残っていたそうです。会社を設立したことは知らなかったそうですが、MeeTruck設立前に開発パートナーの選定を行なっていた際、ある方からベトナムでのオフショア開発ならアドバイスをもらうべきだと紹介を受けたのが、Tokyo Techiesだったそうです。結果として、Tokyo Techiesの優秀なメンバーは、その後のMeeTruckのアプリケーション開発に大きく貢献してくれました。
質問: Tokyo Techiesのチームについて何かユニークだと感じたことはありましたか?
回答:ユニークなところは色々あるんですけど(笑)。 Tokyo Techiesのみなさまには、現在Webアプリケーション開発を中心にご担当いただいてますが、MeeTruckの創業時には、システムのコンサルティングでもお力添えいただきました。それから、MeeTruckの社内リソースが少ない頃には、インフラの設計・構築をサポートしていただきました。さらに、サービスローンチ前には、サイバーセキュリティ監査を実施いただき、そこで指摘された脆弱性は、同じTokyo Techies内のWebチームによって素早く対処していただきました。そのように、ワンストップでソリューションを提供していただけることが、Tokyo Techiesという会社の大きな魅力だと感じています。
質問:仕事をしている中で、MeeTruckチームとTokyo Techiesのエンジニアチームが直接会うことはありませんでした。100パーセント、リモートで進めている形ですが、そのなかでどのようにコラボレーションをしてきたのでしょうか。
回答:MeeTruckとTokyo Techiesは、どちらも若い会社で、社内リソースが少なく、国・言語や会社文化も異なりますから、両社、コミュニケーションの課題に向き合っています。
無駄なコミュニケーションは極力減らしながら、必要最小限の会議を設定するなどして、メンバーがミッションに集中できるように整えています。仕様やデザインの認識を合わせるときには、開発チケットや資料に十分な内容を記載した上で、必要に応じて対面での議論を行います。 とにかく口頭だけで済ますことはせずに、資料化したり、オフライン・オンラインでのコミュニケーションを織り交ぜながら、認識のズレを生まないように注意しています。
それから、時差もありますので、ワークライフバランスにも配慮し、お互いのタイムゾーンを意識してコミュニケーションするようにしています。他にも色々ありますが、結果として、プロジェクト開始からわずか5ヶ月で配車管理システムをローンチすることができましたし、私たちの海を超えたコラボレーションのあり方は、誇るべき成功事例だと感じています。
質問:2年近くに渡ってTokyo Techiesと一緒に開発プロジェクトを進めてきた中で、何かTokyo TechiesとMeeTruckが一緒になって乗り越えた技術面でのエピソードとかがあったのでしょうか。技術的な課題とか。
回答:既存サービスに加えて、新しいサービスを提供する段階において、それまでモノリスな構造に最適化されていた既存サービスを、今後のサービス間連携などを見据えて、マイクロサービスとして再構築しました。 分散トランザクションや通信の負荷、データ整合性と可用性のバランス調整など、難しい技術課題に対して協力して向き合い、一丸となってこの課題を乗り越えました。
質問:ビフォーアフターみたいな感じの質問になるのですが、Tokyo Techiesと仕事を一緒に始める前に開発パートナーとして期待されたことがあったかと思いますが、Tokyo Techiesはその期待に応えることができたでしょうか?
回答:一般的にオフショア開発では、日本特有の開発スタイルや仕事の考え方・進め方に順応できないケースがあると思います。私個人としては当初、Tokyo Techiesに”Tokyo” とついていることもあり、他のベンダーに比べ、日本人の私たちとは良きパートナーになっていただける期待がありました。実際にお仕事してみると、日本特有の考え方によく順応していらっしゃいます。それもそのはずで、代表のDucさんをはじめ、CTOやブリッジSEの方々は、もともと日本の開発プロジェクトでもご活躍されていたメンバーです。感覚が近いので、とてもお仕事がしやすいです。
また私自身もエンジニアですが、Tokyo Techiesのみなさまと技術のお話をする時間は楽しいです。プログラムも優秀で、設計思想やアーキテクチャ、細かなアルゴリズムの組み立て方に至るまで、良い意味で日本的ではないと感じるところがあり、それが刺激的で、良い勉強になっています。日本のスタイルに寄り添っていただきながらも、海外の優秀な考え方に触れられるのは、わたしにとってはとても魅力的な環境です。
質問:最後の質問ですが、他の会社にITパートナーとしてTokyo Techiesをお勧めしたいと思われますか?また今後Tokyo Techiesと一緒に仕事することを検討している会社様に、Tokyo Techiesについて、どういったメッセージがありますでしょうか?
回答:はい、ぜひおすすめしたいと思います。開発はもちろん、サイバーセキュリティ監査や、AIソリューション、システムコンサルティングなど、多岐にわたるソリューションのラインナップをお持ちなので、どのようなご相談であっても、必ずお力添えいただけることがあると思います。
Tokyo Techies:小野寺さんありがとうございました。
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小野寺さんのインタビューからは、MeeTruckが解決しようしている課題、解決策、今後の課題がはっきりと浮かび上がり、ビジネスを通じた社会貢献とはどのようなものであるのか、改めて勉強させていただきました。また、デジタルトランスフォーメーションに際して、攻めのIT投資が少ないこと、また物流業界についてはアナログとのバランスが重要であるといった視点は、デジタルトランスフォーメーションの捉え方に加えていくべきとても重要な視点であると感じました。
またTokyo Techiesについては、高い技術力と経験をもったスペシャリストが在籍していること、また弊社創業者のDucの的確な発言や高い技術力、さらにベトナムでのオフショア開発といったところからまずは認知していただきました。その後ITパートナーとして、開発に携わるだけではなく、開発前のシステムコンサルティングから、サービスローンチ前のサイバーセキュリティ監査とそこで発見された脆弱性への対処に至るまで、ワンストップでソリューションを提供できたのだということを改めて実感することができました。特に、完全リモートでの今回の海を超えたコラボレーションを世界に誇れる成功事例であるとおっしゃっていただき、Tokyo Techiesとしてもシステム開発に対して貢献できたことを大変誇りに感じました。また、オフショア開発の課題としてある日本の仕事の考え方や進め方に順応できないという懸念についても、日本人に近い感覚で仕事を進めることができたということで、Tokyo Techiesの新たな強みが見つかったインタビューになったのではないかと思います。